2009年6月29日月曜日

友人の笑顔が消えた

 携帯が鳴った。
 ことあるごとに助けてくれていた友人からである。
 「たまにはゆっくり飲みながら話そうよ」

 新宿の紀伊国屋書店の裏通りにある喫茶店で待ち合わせした。
 業界人と待ち合わせをするときに、一番わかりやすいところとして何年も利用している。
 この店を告げると誰もが「知ってますよ、最近行ってませんが以前よく利用しました」とかえってくる店だ。

 入ろうとするときに、出てきた客の声が耳に入った。
 「惜しいよね今週で閉店するのは......」
 席についてマネージャーに声をかけた。
 「今耳に挟んだんだけど閉店するのですか?」
 「そうなんです 長い間ご利用ありがとうございました」

 理由を聞くと、寂しげな笑顔を浮かべて「もう商売に疲れましたよ」

 けっこう繁盛し続けていたように見えた店も、実態はそうではなかったのかも知れない。

 様々な人の、喜怒哀楽を見てきたであろう「知る人ぞ知る店」が、またひとつ消えた。

 友人が少し遅れて入ってきた。
 笑顔であるが、自然さはない。
 「何か悪い話でもあるのですか?」
 電話を受けたときから、「何か」感じていた。

 彼は誰でも知っているマスメディアの大手企業で部長職にいる。
 平日の夕方に出かけてくることは、立場上無理があると思っていた。

 無理をしてつくっている笑顔のまま、
 「そうなんですよ 私の部署が廃止されました
  当分閑職になったんです」
 こう話すと、その顔から笑顔が消えた。

 3月に会ったときに、すべての部署で人員削減が行われたと聞いた。その流れの一環なんだろう。
この部署は彼が立ち上げたから、余計寂しさがあると推察する。
 不況アメーバは今や、街角から大手企業まで浸食してきた。

 国民の生活よりも、自分たちが選挙で有利になるために流す「時局的情報」で、いくら景気は底をついたと言い続けても、その現実は「友人の顔から微笑みを奪ってしまった」。

 彼のブログを見てみた。
 「眠れない日が続く」と告白している。
 無理して見せる笑顔は周りに振りまいているのではなく、自分を励ますためだと気づく。

 悩んでいるときこそ、眠らなければならない。
 なぜなら、眠ることによって思考の回路が回復できるから、プラス的考えになりやすいからだ。
 私も過去、生きる望みを失ったことがあった。
 しかしどんなに追い込まれても、その日は眠った。
 どうやって眠ったかって?
 それは、
 「明日になればきっと良くなる
  明日になるためには寝なければ」と思ってベッドに入った。

 どんなことでも、始まれば必ず終わりがくる。
 彼も部署を立ち上げたときから、終わりに向かって進み続けた。
 終わるのが嫌なら始めてはいけない。
 
 彼は、早く整理して再出発をするという。
 早く整理すれば、それだけ早く新しいスタートが切れる。
 間違いなく彼はまた、復活する。
 本当の笑顔が戻る日を、待つ。
 
 

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